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「祝福の約束」

説教ノート No.10                      2023.2.5 

聖書箇所 ローマ人への手紙4章13節~25節


序 論

 救いが律法を行う行為によってではなく、「信仰」によることを語り「信仰義認」を強調したパウロはさらにその祝福について説明を続ける。それはすなわち「世界の相続人」となるという祝福である。しかも、これは神の約束に基づくもので決して無効にされることがない。この虚ろで全ての物が変化するこの世界に生きる私たちにとって、変わらない神の祝福の約束に立って歩めることは大きな希望である。


本論1 祝福はただ恵みによる-世界の相続人- (4:13-16)

 先ずパウロは、神がアブラハムに「世界の相続人」となる祝福を与えられたことを明らかにしている。これは創世記12:2-3に記されている「あなたは、あなたの生まれ故郷、あなたの父の家を出て、わたしが示す地へ行きなさい。そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。あなたの名は祝福となる。」という神のアブラハムに対する召しの言葉をその源泉としている。直接的にはカナンの地を嗣業・相続地与えるということであるが、同時に霊的・終末的にはキリストの支配による全世界を相続することをも意味していると言えよう。つまり、アブラハムとその子孫に神の全ての富が豊かに与えられるという祝福である。しかも、この祝福は救いが信仰によって与えられるように、行為への報いではなく、信仰義認の結果として与えられるのである。だからこそパウロは「恵みによる」と強調する。人間は権力と富を得ることに固執してあらゆる努力をする。しかし、それは得たとしてもやがて失われるものである。恵みによって私たちが相続する神の富は決して失われない。私たちはこの価値判断を決して誤ってはならない。


本論2  祝福は約束への信頼による (4:17-22)

 次に、アブラハムが祝福を与えられるようになった信仰の姿勢について説明が続く。それを要約すると、20節に「神の約束を疑うようなことはなく」と記されているように神の約束に信頼し、期待し続けた信仰と言うことができる。アブラハムの生涯におけるその具体的例は、①自分や妻サラの老齢化にも関わらず約束の子供が与えられることを期待し続けたひたむきな信仰の姿。②やっと与えられた長男イサクをモリヤの山で「全焼のいけにえ」(燔祭、神への全き献身を意味する)として捧げるよう求められた時、神への絶対的信頼によって従ったこと等である。状況や自分の感情に振り回されず、どんな時にも、いや困難の中でこそ神の約束を信じ続ける信仰が、やがて大いなる神の祝福を得る結果を招くのである。私たちの信仰も目先の損得で一喜一憂するようなご利益信仰ではなく、自分の感情に翻弄されて摩滅していくご都合信仰ではなく、聖書の御言葉に聴き続け、礼拝を貫き、祈り続ける者でありたい。そのようにして神の祝福の約束を待ち望む信仰は引き上げられ、やがてその実現を目の当たりにするのである。私たちも日常の信仰生活においてそれを豊かに経験していくものでありたい。


本論3 十字架と復活による神の祝福 (4:23-25)

 さて最後に、神の祝福がアブラハムだけでなく信じる私たちにも与えられ、それが主イエスの十字架と復活において保証されることが説明されている。それではアブラハムと私たちの信仰の共通点は何であろう。それは「死者をよみがえらせる神」への信仰である。父アブラハムが、愛する息子イサクを神が死からも生かすと信じたように、私たちキリスト者も主イエスの十字架の意味を信じ、さらにその復活を信じるものである。この復活信仰こそアブラハムと私たちの確固とした共通点である。そして、神はこの信仰だけを根拠に私たちを「義」と認めて下さり、神の子としての特権を与えて御国とその宝を相続させて下さるのである。かつては自分の欲と罪のために貧しくなっていた者が、悔い改めて信じる「信仰」だけで、今や大いなる神の富の豊かさに満たされる恵みに与っていることを感謝しよう。私たちのためにキリストの十字架と復活の事実がそれを保証していること確かめよう。私たちの信仰生活は順風満帆の時ばかりではない。時に悩み苦しみ、迷い揺らいでしまうこともある。その時こそ、私たちの祝福の源泉は神の側にあり、しかも神ご自身がそれを保証して下さっていることを力として立ち上がろうではないか。キリストの十字架と復活の御姿を決して見失ってはならない。


結 論

 神の約束は信じる者に神の御国とその富一切を相続させるという祝福である。ここに私たちに対する神の愛がいかに大きいかを驚かされることである。そして、この約束は私たちにどんな時でも希望を与えるものである。私たちが聖化の途上、信仰生活の日々において様々な出来事に直面する時も、神の祝福の約束をしっかり握って前に向かって進んで行こう。ハレルヤ。

 

御言葉に対する応答の祈り

①祝福を与えて下さる神の愛と恵みに感謝しよう。

②神の約束に期待し信頼し続けよう。

 

次回説教

 聖書箇所 ローマ5:1~5

 説教題 「義認の結果」


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