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「愛する同労者へ」

説教ノート No.39                     2024.6.23

聖書箇所 ローマ人への手紙16章1節~16節


序 論

 いよいよ最終章、コリントの町から筆を走らせるパウロの心には、遠くローマ教会の愛する兄弟姉妹たち一人一人のことが存在し、その名前を呼びかけながら挨拶を書き送っている。先ずこの手紙を託すフィベの紹介、次にかつての同労者アキラとプリスカへの挨拶、そして、ローマ教会の多くの知人たちへの感謝の言葉が続く。パウロはこの手紙を締めくくるにあたって、彼らに心からの感謝と親愛の情を伝えようとしたのである。


本論1 フィベに託して (16:1-2)

 先ずパウロはこの手紙をコリントからローマへ届けるための使者となったフィベという女性を紹介する。彼女はケンクレアの教会の執事(直訳:奉仕者)で教会に仕える役員であった。このフィベはパウロの働きを熱心に助け、多くの人々の援助者として仕え奉仕してきた人物であるが、パウロは彼女をローマ教会の皆が心から歓迎し、異国の地での滞在中慣れない生活を助けてもらいたいと願ったのである。細やかな愛の配慮と言えよう。一つ注目したいのは、1節に「主にあって彼女を歓迎し、あなたがたの助けが必要であれば、どんなことでも助けてあげてください。彼女は、多くの人々の支援者で、私自身の支援者でもあるのです。」と「助けて」の繰り返しがあることで、これは「援助者、パトロン」を意味し、外国人の法的代理者、保護者のことである。ヘブル書13章2節には、「旅人をもてなすことを忘れてはいけません。そうすることで、ある人たちは、知らずに御使いたちをもてなしました。」とあり、初代教会においても旅人をもてなすことは大切な務めであったことが分かる。私たちも同じように受容力のある信仰共同体として成長していきたいものである。


本論2  愛する同労者へ-アキラとプリスカ- (16:3-5)

 次に、アキラとプリスカ夫婦への挨拶と彼らの紹介が続く。この二人はパウロの伝道を命がけで支援し、大きな働きをした同労者である。彼らがクラウディウス帝のユダヤ人排斥政策でローマから追放されコリントに来ていた時、第二回伝道旅行中のパウロとの出会いがあった。パウロと彼ら夫婦は協力して天幕作りの仕事をしながら自給開拓を進め、後にはエペソまで同行して教会の基礎を築き、さらにはアポロに個人伝道をして正確な福音理解へと導いたことも大きな功績であった。さらにはこのエペでは徒党を組んでパウロを殺そうとした暴徒たちに、自分の首を身代わりとして差し出すほどの命がけの働きをしたことも驚くべき出来事であった。やがて二人はクラウディウス帝没後ローマに帰り、そこで彼らの家庭を解放して家の教会を生み出していたのである。何という宣教への情熱、行動力、献身の姿であろうか。現代のキリスト教界が必要としている信徒像、そして、パウロとのチームワークも私たちにとって模範となるものである。パウロはアキラとプリスカ夫婦と、信仰の友、福音の同労者として別れを経験した後、時が過ぎても、キリストとその福音のために生き続ける彼らの姿に、言葉では言い尽くせない感動と感謝を覚え、この挨拶の言葉をフィベに託したのである。


本論3  愛する同労者へ-ローマ教会の聖徒たち- (16:6-16)

 さらにローマ教会の兄弟姉妹たちに心からの挨拶を送る。ここには24人の固有名詞が紹介されるが彼らはどの様な人物だったのだろうか。エパイネト(小アジアの初穂)、マリア(ユダヤ人婦人)、アンドロニコ(ローマ人で初期からの信徒)、ユニア、アムプリアト、ウルバノ(ローマ人で初期からの同労者)、スタキス(ギリシャ名で不明)、アペレ(ユダヤ人信徒)、アリストブロの家の人々(信者家族とその家の使用人・奴隷たち)、ヘロディオン(アリストブロ家の奴隷)、ナルキソ(奴隷から解放された自由市民)の家の人々、トリファイナとトリフォサ(二人姉妹)、ペルシス(不明、信仰熱心な信徒)、ルフォス(クレネ人シモンの息子、優れた信仰の活動者)、アシンクリト(奴隷)、フレゴン(奴隷)、ヘルメス(奴隷)、パトロバ(奴隷)、ヘルマス(奴隷)、フィロロゴとユリア(奴隷夫婦)、ネレウス(皇帝家の貴婦人)、オリンパ(ローマ婦人)。これらの人々の多くは奴隷と婦人である。キリストの教会は人間の権力や力によっては建て上げられない。雑草のように生きる奴隷が放つキリストの香り、神への愛を源とする婦人パワー、これこそ教会を成長させ、さらにはローマ社会・国家をも変革していく原動力となったのである。このことを思うと勇気が込み上げてくる。私たちも主の同労者であることを誇りとしよう。


結 論

 今、筆を置こうとするパウロの挨拶の言葉に、同信の友・福音の同労者に対する堅い信頼と深い愛情を強く感じ取ることが出来る。この信頼と愛こそ、神と共に働いて教会を生み出し、建て上げる力であると言えよう。私たちの南柏聖書教会が、また諸教会が力強く成長し、宣教の御業が前進していくようにと祈ろう。

 

御言葉に対する応答の祈り

福音の祭司として仕えることができるように。

教会がビジョンを仰いで前進できるように。   

 

次回説教

 聖書箇所 ローマ16:17~27

 説教題「信仰に堅く立つ」


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