説教ノート No.37 2024.5.26
聖書箇所 ローマ人への手紙15章1節~13節
■序 論
これまで信仰による生き方、すなわちキリスト者の倫理について教えたパウロはここにその結論を語っている。それはキリストの模範にならって生活するという言葉に要約することが出来る。私たちは、これまで学んで来た教理理解と倫理の実践のバランスを大切にし、教会の外には世の光、地の塩として社会的責任を果たし、教会の内においては兄弟姉妹の一致を保ち、愛の実を結びつつ、聖化の途上をさらに前に進むものでありたい。
■本論1 キリストの模範 (15:1-3)
先ずパウロは、冒頭で「私たち力のある者は、力のない人たちの弱さを担うべきです。」(15:13)と勧めている。さてこの「力のある者」とどういう意味だろう。それは彼自身が「私は、私を強くしてくださる方によって、どんなことでもできるのです。」(ピリピ4:13)と告白しているように、能力や賜物の力以上に神の励ましを得て力付けられている者のことではないだろうか。その人こそ弱さを覚え、助けを必要とする者の「隣人」になることが出来るのである。注目すべきは「担う」は、わずらわしい重荷を共に背負って運ぶという意味があり、キリストが十字架を負うときにも同じ原語が用いられている。さらに弱さを担うとは「自分を喜ばせる」のではなく、「他を喜ばせる」こととも説明されている。これはまさに主イエスご自身の生き方である。「キリストもご自分を喜ばせることはなさいませんでした。」(15:3)とあるように、その生涯そのものが自己否定、自己犠牲であった。これこそ私たちの生き方と人間関係において目指すべき最大の模範である。苦難のしもべ、十字架のキリストの御姿を仰ぎ、私たちも自分の弱さを知り、隣人の弱さを担う「力のある者」となりたい。
■本論2 神の御言葉、聖書の教え (15:4-6)
次に、パウロは教会における兄弟姉妹の信仰と一致について、神のことばすなわち聖書がその根拠であることを教える。「聖書が与える忍耐と励ましによって、私たちが希望を持ち続けるためです。」(15:4)とあるが、なんと素晴らしい言葉であろう。神の言葉である聖書によって与えられる忍耐と励ましによって、私たちは「力のある者」へと練達され、希望を持ち続けることが出来るというのである。同書5章3~5節で、彼が「そればかりではなく、患難さえも喜んでいます。それは、患難が忍耐を生み出し、忍耐が練られた品性を生み出し、練られた品性が希望を生み出すと知っているからです。この希望は失望に終わることがありません。」と語った言葉は、ここにしっかりと繋がっていると言えよう。続いてパウロは神の御言葉が教会(エクレシア)の交わり(コイノニア)にどの様な実を結実させるかを象徴的な言葉を選んで語っている。それは「同じ思いを抱く」(15:56)、「心を一つにし」(15:6)、「神をほめたたえる」(15:6)であり、いずれも教会の一体性を的確に表現していると言えよう。そして、これは私たちの教会が祈り願うことであり、私たちも聖書の御言葉に教えられながらこの様に成長・成熟へと向かうものでありたい。これこそ南柏聖書教会の成長の姿である。
■本論3 キリストにならい互いに受け入れ合う (15:7-13)
最後に、パウロは信仰の「強い者」にも「弱い者」にも再度「互いに受け入れ合いなさい」と強調する。3節では「キリストもご自分を喜ばせることはなさいませんでした」という消極的表現で一致への根拠を語ったが、ここではキリストが「キリストがあなたがたを受け入れてくださったように」という積極的な模範を指摘している。この「受け入れる」という語は大変重要で「心から歓迎する」という意味があり、キリストが私たちを歓迎して下さるように、主にある兄弟姉妹は互いに歓迎して受け入れ合うことが大切であり、ここに教会の麗しい姿があると言えよう。さらに続く9節から12節では異邦人たちが、ユダヤ人と同じように神に受け入れられ、同じ救いの民とされることが示されている。「異邦人よ。主の民とともに喜べ。」(15:10)と記されているとおりである。パウロは結論として、ユダヤ人と異邦人の救いがキリストによって完成し、その民族、文化、時代を超えて神の家族である教会に受け入れられた事実を語ろうとしたのである。そして、キリストの教会に共に連なる私たちが、喜びと平和に満たされ、聖霊の力によって、望みにあふれた信仰生活の日々を歩めることを感謝しよう。私たちを受け入れて下さったキリストにならって、私たちは互いに受け入れ合い、祈り合う者となろう。
■結 論
教会の生命線は、そこにキリストご自身が生きておられ、兄弟姉妹の交わりのうちにキリストの愛が豊かに結実しているかということである。そのためにキリストの模範が私たちに啓示され、聖書の御言葉が私たちを教導いて下さるのである。この事実を見失ってはならない。今ここに、私たちは神に受け入られ、十字架によって救われている事実を再確認しよう。そして、キリストの模範に倣って生活するべく再決心しよう。
■御言葉に対する応答の祈り
①キリストの模範と御言葉によって歩めるように。
②神に受け入れられた者として他者を受け入れられるように。
■次回説教
聖書箇所 ローマ15:14~33
説教題 「ビジョンに向かって」
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