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「御霊と御力によって」

説教ノート No.4                      2024.10.6

聖書箇所 コリント人への手紙第一2章1節~5節


序 論

  パウロはコリント教会の分裂・分派の問題にキリストの十字架を求心力とする一致を勧めた後、その単純な福音のメッセージにこそ人為を越えた神の力が表され、聖霊によって救いの御業が行われることを明らかにする。私たちもパウロが明示する「キリストの福音」をどう理解しているかを再確認するとともに、教会の使命である福音の宣教に思いを向け、そこに祈りと力を結集するための示唆を得たい。


本論1 知恵のことばか、十字架のキリストか (2:1-2)

  先ずパウロは、第二次伝道旅行、アテネを去ってコリントに着いた時の自身の決意が、新たな宣教地で率直に単純にキリストの十字架を伝えることであったと振り返って語っている。それはアテネのアレオパゴスでギリシャ哲学者たちと論じた時、人間の思弁がどんなに巧みで説得力があっても、それが人間の救いには繋がらないことを痛感していたからであった。彼は前章で「それゆえ神は、宣教のことばの愚かさを通して、信じるもの救うことにされた」(1:21)との確信を述べているが、これがキリストの十字架と復活、即ち福音を語ることに勇気と大胆さを与えたのであった。人間の魂は、高名な学者の理論によっても、偉大な宗教家の言葉によっても救われるものではない。それは知的満足や宗教体験の達成感の範囲であろう。ただイエス・キリストの十字架のことば、即ち、福音によって罪から解放され、死と滅びから永遠のいのちへと勝ち取られていくのである。これが聖書の説く「救い」である。私たちも人と人の知恵を恐れず、この救いの恵みに与った者として確信をもって福音を語るものとなろう。


本論2 御霊と御力によって (2:3-4)

 次にパウロは、福音が伝えられていく力の根拠を明かにするために先ず自分自身が経験した事柄について語っている。それは「私は弱く、恐れおののいていました」という意外な言葉である。私たちのパウロ像からは想像できない言葉であるが、この「恐れ」とは何であろう。もちろんコリント伝道の困難に対する恐れであることは確かであろう。しかし、それ以上に自らの「使徒」という職責の重さへの恐れではなかっただろうか。しかし、パウロは続けて「私の宣教は、・・御霊と御力の現れでした」と彼の思いの核心部分を語っていることに注目したい。これは宣教の主体が聖霊なる神ご自身であり、伝える者が十字架を鮮明にするとき、そこに神の御力が働いて魂が救いに導かれ、キリストの教会が建て上げられるという意味である。パウロはこのことを知っているからこそ、むしろ自分の弱さや恐れを吐露してそこに及ぶ神の力を示そうとしたのである。私たちが自分の口で福音を語り、証しをする時に決して忘れてはならない宣教の力の根拠である。自分の無力を嘆かず、聖霊なる神の力に委ねて十字架を語る者となろう。


本論3  神の力に支えられ (2:5)

 最後にパウロは、福音の宣教が人の力によってではなく、聖霊の御力によってなされることでそこにどんな結実があるかを教えている。それは「あなたがたの信仰が、人間の知恵によらず、神の力によるものとなるため」ということである。つまり神の力を源泉とする信仰こそ真に価値あるものであり、人の知恵や影響力に依拠する信仰及び信仰生活は実に虚ろなものであることを示していると言えよう。換言すれば、信仰を人の知恵の上に建てずに神の上に建て上げることの大切さを説くものである。残念ながらコリントの教会はこの点において失敗していた。自分たちの信仰を「パウロに、アポロに、ケパに」と言いながら、神ではなく人間の知恵とその影響力の上に保とうとしたのである。その結果、キリストの名を冠する教会に分裂・分派という悲しい現実を生み出すことになってしまった。「神の力による」。この意識こそ私たちが信仰の自立へと向かう第一歩。神との関係を確立して教会を建て上げ、宣教に励むものでありたい。


結 論

 私たちの信仰、そして、教会形成と宣教の原動力は「聖霊なる神の力」にある。そして、この力を受けるには特別な能力や努力を必要としない。ただ神を中心とする信仰と信仰生活の基本に忠実な応答の中で実を結ぶことを再確認しよう。どこまでも御言葉に聴き、神への信頼によって生きて行きたい。

 

御言葉に対する応答の祈り

恐れることなく十字架の福音を語れるように。      

聖霊の御力による教会形成と伝道が進められるよう。

 

次回説教

 聖書箇所 Ⅰコリント2:6~16

 説教題  「キリストの心」


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