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「キリストの名によって」

説教ノート No.6                      2020.8.2 

聖書箇所 使徒の働き3章1節~10節


序 論

 初代教会はローマ支配の下にあるユダヤ社会に積極的に働きかけ福音の証しに励んだ。「使徒たちによって、多くの不思議なわざとあかしの奇跡が行われた。」(2:43)とあるが、その例証としてここに自立歩行の困難な「足なえの人」のいやしがある。私たちは、この奇跡が何を意味し、どう展開していくのかを確認し、教会の力強い姿に学び、励ましを得たい。


本論1 美しの門にて-世の現実に- (3:1-3)

初代教会における弟子たちの生活は神礼拝がその中心であり、ペテロとヨハネは連れだって午後の祈りに神殿に向かっていた。そこに一つの出会いが生じた。彼らの前に生まれつき足の不自由な男が運ばれて来てものごいを始めたのである。「美しの門」の前で、地にへばりついて手を差し出す男の姿は、金で装飾された門の美しさとはあまりにも対象的でみじめなものであっただろう。そして、ここに教会が直面する大きなしかも厳しい現実があると言えよう。教会から一歩外に出ると、そこには多くの苦しむ人々の姿があり、病気、貧困、差別、争いが絶えないのである。この現実を前に私たちは胸を叩くことしか何も出来ない。しかし、全能なる神を信じ、聖霊の力を受けた教会が、美しの門の現実にどの様に対応したのだろうか。私たちはその点について洞察を深めたい。


本論2 私を見なさい (3:4-5)

 施しを求められたペテロとヨハネは彼を見つめた。それは深い同情とあわれみを秘めた眼差しであろう。かつて主イエスが苦しむ人々を見つめた目がそうであり、弟子たちもその目で見つめられた経験の持ち主でもあった。教会が世の現実に向けてなす最初の事は、主イエスの眼差しが向けられる先がどこにあるかを意識することではないか。さらにペテロが語った言葉に注目しよう。「私たちを見なさい」と。これは言うまでもなく自己宣伝の言葉ではない。自分がキリストによってどの様な者とされたかに注目を求める証しの言葉である。自分自身の今ある姿を通し、人々の目がイエス・キリストへ向けられる時に神の業が始まるのである。私たちも自分を誇るのではなしに、主イエスへの誇りをもって「キリストを見なさい」と語るものでありたい。これこそ聖霊による証しである。そして、その聖霊の力(ドゥナミス)は私たちの上に臨在し、また内在していることを覚えよう。


本論3 キリストの名によって (3:6-10)

 言葉の意味が分からないまま施しを求めた男に、ペテロは続けて「ナザレのイエス・キリストの名によって歩きなさい。」と語った。彼が与えることができた唯一のことは「イエスの名」を宣言し、その力を明らかにすることであった。直後、男は足が強くなり立ち上って踊りだしたのである。しかし、この出来事の中心はいやしの奇跡ではない。4章9節の「いやす」は直訳すると「救い」を意味している。つまり、男がイエスの御名によって救いを経験したことのしるしとして記録されているのである。私たちは現実世界の悲惨の前にあまりにも無力である。しかし、教会が世の痛みに対してなせることは何か。それは「イエスの名による救い」を明らかに宣言することである。そこに神の奇跡の業が行われる。慈善や福祉が福音に優先するものではない。しかし、イエスの目がそこに向けられる時に、私たちの手は動かされるのではないだろうか。私たちも、そして、教会も、現実世界の悲惨その破れ目に立ち、キリストの手足となり、またキリストの救いにつなぐ証し人となりたい。


結 論

 初代教会は「イエスの名」を宣言し、福音をもって世の痛みに応えていく群れであった。ここに教会の姿、その働きと力の源泉が示されている。この人間の本質的な罪に病み痛む時代において、私たちの教会もキリストの「救い」の奇跡を世に証しするものとされたい。聖霊は私たちの手を動かして下さる。ハレルヤ。

 

御言葉に対する応答の祈り

①救いの福音を明確に語れるように。 

②世の痛みに少しでも応えていけるように。

 

次回説教

 聖書箇所 使徒3:11~26

 説教題 「勇気ある宣言」


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