説教ノート No.27 2021.6.6
聖書箇所 使徒の働き16章1節~15節
■序 論
パウロとシラスによる第二回の伝道旅行の目的は、先の伝道で誕生した小アジヤ(現在のトルコ西部)の諸教会を再度訪問し、困難の中で奮闘する兄弟姉妹たちの信仰を励ますことにあった。魂への配慮のために労を惜しまない、さらに福音宣教に励もうとする彼らの心意気を強く感じとることが出来る。さらに神の計画にはパウロの計画や考え以上のものがあり、聖霊の導きによって福音はエーゲ海を渡ってさらにマケドニアへと伝え られ、ヨーロッパ伝道の第一歩が進められることになるのである。
■本論1 ガラテヤ訪問-テモテとの出会い- (16:1-5)
パウロとシラスは前回とは逆コース、陸路でデルベそしてリステラを訪問した。ここはパウロが石打にされ瀕死の重傷を負った迫害の激しかった町である。しかし、そうであればこそ、孤軍奮闘する教会を励ましたいと思う彼の姿勢に心打たれる。しかも、ここでは生涯の同労者で愛弟子となるテモテとの出会いがあった。彼の資質は、①諸教会の間で評判の良い信仰の人であること、②ユダヤ人を母に、ギリシア人を父に生まれ、ヘレニズム世界とヘブライズム世界の双方に福音を語ることができ、ユダヤ人と異邦人との懸け橋になれることである。注目すべき点として、パウロがテモテを伝道に同行させるにあたって彼に「割礼」を受けさせたているが、これはエルサレム会議決定への矛盾ではなく、母方の国籍を引き継ぐ慣習にならい、テモテがユダヤ社会に受け入れられて、より積極的に伝道することができるための判断である。テモテはこの後パウロの良き同労者として活躍し、やがてエペソ教会の牧師として神の栄光を現すことになる。神の御業は、信仰の人を用いてこの様に進展して行くのである。私たちも神の計画とその御業の進展を期待し、なすべきことを忠実かつ誠 実に果たしていく者でありたい。
■本論2 マケドニアの叫びに-聖霊の導き- (16:6-10)
当初パウロの計画は、アジア地方を中心に伝道することであった。アジア西部の大都市エペソを最終的な目 的地としていたのかも知れない。しかし、アジアでの伝道が聖霊によって禁じられたのでミシヤに向けて北上しビティニアに入ろうとしたが、これもイエスの御霊がお許しにならなかったと記されている。そこでパウロたち一行は、再度進路を変更して西へ向い、港町トロアスに到着したのである。何をもって聖霊の禁止を判断したかは分からないが、伝道の計画や実行に聖霊なる神の関与と導きがあることは事実である。(箴言19:2 1)このトロアスでパウロは幻を見ることになる。それはエーゲ海を渡って対岸に位置するマケドニア人による「来て、私たちを助けてください。」という叫ぶ者の姿であった。聖霊は神に従う者に「魂の叫び」を聞かせ、 救いを必要としている人の所に導かれるのである。やはり伝道の主体は聖霊ご自身である。私たちも魂の叫び を敏感に聴き取り、そこにキリストの十字架と復活を的確に宣べ伝える者となりたい。
■本論3 ヨーロッパ伝道の開始-ピリピ教会の誕生- (16:11-18)
トロアスからの出帆、そして、マケドニア上陸は、ヨーロッパ伝道の夜明け、ヨーロッパキリスト教文明の黎明という歴史的出来事と言っても過言ではない。パウロたち一行はマケドニア第一の都市ピリピに入り早速伝道を開始した。最初に導かれた人物はティアティラから来た紫布商人のリディアという女性であった。パウロから十字架と復活の福音を聞いた彼女は、心動かされ、悔い改めて信仰を告白し、家族と共に洗礼を受けたのである。ここに初穂が献げられることによってピリピ教会が産声を上げたのである。以来、このピリピ教会はパウロが最も愛した教会であり、パウロの世界宣教の働きを最もよく支える教会として成長していくことになる。福音は聖霊の働きによって西へ西へと前進し、やがて世界都市ローマへ、そして、全ヨーロッパへと宣べ伝えられて行く。そこにどんなに激しい迫害や困難があっても、神の御業を阻止できる者は誰もいない。私たちも初代の宣教者たちや、ピリピ教会のスピリットを引き継ぎ、自分の置かれた地において、また広く世界をみはるかし、魂の救いのために、福音宣教の前進のために喜びと確信をもって励むものでありたい。
■結 論
私たちが神の前に祈る時、私たちの内には「マケドニアの叫び」が聞こえてくる。福音を携え語る者がなければ救いの恵みにあずかる者はいない。聖霊は救いの御業を行うために、先にそれを体験した者を用いられるのである。あなたもトロアスから出帆の備えは出来ているか。今や「私」の船出の時である。
■御言葉に対する応答の祈り
①救霊の情熱に燃やされるように。
②宣教の器とされるように。
■次回説教
聖書箇所 使徒16:16~40
説教題 「開かれた扉」
Comments