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「切り開く宣教」

説教ノート No.24                     2021.4.25 

聖書箇所 使徒の働き14章1節~28節


序 論

 ピシディアのアンティオキアにおける伝道で、福音に対する人々の反応は、異邦人たちの「受容」、ユダヤ人たちの「拒否」に大きく二分されるものであった。福音のメッセージが鮮明に語られる時、それに対して抵抗が生じることがある。それは人間の自我に対する神の語りかけであるからである。しかし、真理の御言葉は聖霊の力によって高く固い自我の壁をも切り開いて前進する。この第一次伝道旅行の道程にその展開を見よう。


本論1 イコニオム伝道 (14:1-6)

 ピシディアのアンティオキアの地で、福音を拒否するユダヤ人が町の権力者を動かし、パウロたちを追い出したため、彼らは東に130キロ離れたイコニオンに進んで伝道を開始した。ここでもユダヤ人やギリシア人が多く信仰に導かれたが、町の人々が使徒側とユダヤ人側の二派に分かれるという事態が起こった。考えて見ればこれは当然のことである。十字架は厳しく「滅び」か「救い」を二分し、それを選択する人間も福音に対する中立な立場はありえないのである。神は一方的な恵みによって、罪人が一人として滅ぶことを願わず、救いの道を開かれた。同時に、その恵みに心を開いて受け入れる者のみ救われる事実を「神の選び」と言う言葉で表現することが出来よう。神の救いへの導きは、決して強制的でもなく、ロボットのように機械的扱いでもない。あくまでも人間に意志による選択の自由が与えられているのである。ここに福音の価値、救いの素晴らしさがあるということが出来る。私たちも自分自身の選択とそのあり様を問うてみよう。


本論2 リステラ伝道 (14:7-18)

 イコニオンにおいて福音に敵対する人々による殺害計画を知ったペテロとバルナバは、南に約30キロにあるリステラ、さらに東に約100キロにあるデルベに移動して難を避け、福音を語り続けた。ここでの出来事は、足の不自由な人を主イエスの御名によっていやすという奇跡から始まっている。この出来事を目の当たりにして驚いた人々は、ギリシア神話の神観から、バルナバを主神ゼウス、そして、パウロを雄弁の神ヘルメスと呼んで崇め、いけにえを捧げようとしたのである。秀でたローマ文化やギリシア哲学を持ちながら真の神に対する無知は、彼らの魂を暗くし救いから遠ざけていたと言えよう。そこでパウロは、天地創造の神を知り、信じ、偶像礼拝を捨てるべきこと。②生ける神は寛容をもって異邦人がご自身に立ち返るのを待っておられること。③真の神は恵みをもって全ての人を養っておられることを告げたのである。これは神話の神から創造の神へと神観を変えるべきことを迫る重要な説教であると言えよう。試練の壁を切り開くことと同時に、偶像礼拝の祭壇を砕き、聖書の神観を告げることは重要な宣教である。


本論3 切り開く宣教 (14:19-28)

 このリステラ伝道において、パウロは突然の危機に見舞われることになった。それは、ピシディアのアンティオキア、イコニオンで福音を語ったパウロたちを攻撃してきたユダヤ人たちが、彼らを執念深く追跡して来て、群衆を扇動してパウロを石打にして殺そうとしたのである。激しく石に打たれ、気絶したパウロは町の外に引きずり出されたが一命を取り留めることが出来た。この時、彼のまぶたには殉教していくステパノの雄姿が見えていたであろう。そして、そこには確かな神の守りの御手があったのである。非常な迫害にもかかわらずパウロの宣教に対する情熱は決して消え去らなかった。彼はひるむことなく福音を語り、前進し続けたのである。デルベでの短い伝道を終えてアンティオキア教会に帰る時も、パウロたちは誕生したばかりの諸教会と兄弟姉妹たちを励まし「私たちが神の国に入るには、多くの苦しみを経なければならない。」と信仰に留まることを勧めている。福音を語り宣教を展開する時も、福音を信じて信仰生活を進める時にも、そこには必ず試練や困難が伴うと言っても過言ではない。しかし、それは無駄でも、無意味でもなく、信仰が練り鍛えられる時である。


結 論

神を信じ、福音に生きようとする者は、この世にあって戦いがあり苦しみがある。しかし、十字架の救いの絶大な価値を知った時、困難の壁を切り開いて前進する力が与えられることを私たちは忘れてはならない。そこにキリストの救いが証しされていくのである。我らの歩みは切り開く宣教の歩みである。主イエス・キリストの十字架と復活の福音を力強く語り伝える者となろう。ハレルヤ。

 

御言葉に対する応答の祈り

①自分の信じる立場を鮮明にできるように。

②試練を切り開いて証しする力が与えられるように。

 

次回説教

聖書箇所 使徒15:1~21

説教題  「神のみこころを求めて」


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