説教ノート No.40 2022.5.1
聖書箇所 使徒の働き23章1節~35節
■序 論
神は全てのことを働かせて益として下さる。パウロの捕縛は彼が同胞ユダヤ民族に十字架の福音を語る機会となり、さらにはローマへの道を大きく開く結果となった。私たちは目の前の試練に困惑して失望し、目の前の状況に左右されて信仰の視点を失いやすいが、全てを益にする神の導きに信頼し、期待し続けることを忘れてはならない。それこそ信仰であり、キリスト者の生き方である。
■本論1 ユダヤ議会の前で (23:1-11)
怒りに燃えるユダヤ人たちと、ローマ市民権を主張するパウロへの対応に苦慮する千人隊長は、国会に当たるサンヒドリン議会を召集し、ユダヤ人の告訴理由を確かめようとした。パウロはここでユダヤ社会の最高権威の前で福音を弁明する機会を得ることになる。彼が語りだすと大祭司アナニヤは彼の大胆な態度に憤慨して殴打を命じるが、パウロは毅然としてひるまず、その不当処置に抗議して神の裁きを警告した。またユダヤ人の告訴理由が「復活」の主張に対してであるとパウロが説明すると、議会はパリサイ派とサドカイ派に分かれて対立混乱し、復活を教義の大前提にするパリサイ派の中からパウロを弁護する者が出るほどであった。この混乱と危機の中で主イエスはパウロに現れ「勇気を出しなさい」と彼を力強く励まして下さった。「勇気」にはそれを支える裏付けがいる。死を亡ぼして蘇られた復活の主が共におられるという事実こそ勇気の源である。私たちもあらゆる状況に主ご自身が伴って下さることを信じ、勇気を得て歩み続ける者となろう。
■本論2 陰謀の危機の中で (23:12-23)
次に、パウロに語られた主イエスのもう一つの言葉は「ローマでも証しをしなければならない」である。しかし、この御言葉が実現に至るには、パウロはさらに多くの試練を乗り越えなければならなかった。議会が混乱したためパウロはローマ軍の兵営に一時保護されていたが、徒党を組んだユダヤ人たちがパウロ暗殺の陰謀を企てたのである。その計画は、議会と結託して偽りの取り調べを行うように根回しし、召喚に応じるパウロを途中で殺し闇に葬ろうというものであった。しかし、ここにも神の守りと必要な助け手が備えられていた。それは、パウロの甥がユダヤ人たちの計略を聞きつけ、ローマ側の千人隊長に知らせて未然に対策を講じることができたのである。神の計画が成るためには、神ご自身が人知を越えたあらゆる方法で事を行われる。私たちがその時々に相応しい状況判断をして行動することは大切なことである。しかし、全能の神を信じ、そこに全幅の信頼を置いての「判断」と「行動」には神の全能の御手が及ぶと言えよう。「勇気」と「平安」が一つとなる時である。私たちも「インマヌエル」(主共に在り)をいつも自身の心に刻んでいたい。
■本論3 ローマ総督の前で (23:24-35)
知らせを受けた千人隊長は、パウロを保護するために強力な護衛部隊を付け、カイサリア(エルサレムから北西に直線で65キロにある地中海沿岸のローマ都市)に駐在するローマ総督フェリクスのもとへ護送することを命じた。この時、千人隊長クラウディウス・リシヤはパウロに同情したわけではなく、騒動が大きくなことで自分の責任が追求されることを恐れたためであるが、福音の使者を守る天の軍勢の存在を思わせる象徴的な展開であり、まさに神の直接の介入と言えよう。また千人隊長の総督への手紙には、パウロが宗教上の訴えを受けただけで一切ローマ法に触れるような罪を犯していないことが明記されていた。パウロにとって不本意な捕らわれの身でのカイサリア護送であったが、これは彼がやがて世界都市ローマに立つ可能性を大きく開き、その道を一歩進めることになったのである。福音の前進と御言葉の成就を妨げることは何人にも出来ない。今私たちが抱くビジョンはあらゆる状況においても神の計画のうちに進んでいることを忘れてはならない。そして、それは時満ちて必ず実現するのである。
■結 論
今、主イエスは私たちに「勇気を出しなさい」と語りかけ、励ましていて下さる。そして、私たちが心に抱くビジョンや願いを主が知って下さり、受け止めて下さる。また必ずそのための道を開いて下さり、実現に向けて導いて下さる。時に私たちが困難や試練に直面する時にもその状況だけを見て失望してはならない。勇気を出して前を向いて進もう。インマヌエル。主が共にいて下さるではないか。
■御言葉に対する応答の祈り
①信仰による勇気をもてるように。
②主が共におられることに強められるように。
■次回説教
聖書箇所 使徒の働き24:1~27
説教題 「最善を尽くして」
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