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「困難こそ前進の時」

説教ノート No.14                     2020.10.4 

聖書箇所 使徒の働き8章1節~40節


序 論

ステパノの殉教は教会にとって非常に大きな試練であったが、彼の死は教会とキリスト者の生き方に大きな影響を与え、福音がさらに前進していく転機になった。十字架と復活の福音は教会にも生命と力を与え、エクレシアに連なる者たちに神の御業を行わせるのである。神は逆転の奇跡を行われる。私たちも困難に直面した時にうろたえることなく、そこに神のチャンスがあることを見極めよう。


本論1 困難こそ前進の時 (8:1-3)

ステパノの事件を契機に、ユダヤ社会、権力者たちによる迫害は教会全体に向けられるようになった。それはユダヤ教の指導者たちが、ステパノの弁明が彼個人のものではなく教会の主張であると判断したためであろう。中でもステパノの処刑に賛同したサウロは、神に対する熱心から異端とも見える教会を、義憤をもって叩いたのである。一方、激しい攻撃を受けた信徒たちは使徒たちを除いてエルサレムを離れることを与儀なくされた。しかし、これは決して敗北の都落ちではなく「散らされた人たちは、みことばの福音を伝えながら巡り歩いた。」と記されているように、さらにエルサレム以外の広範な地域に福音を宣べ伝えるために散らされて(ディアスポラ)行ったのである。聖霊なる神は困難な時にこそ教会に力を与え、大いなる業を行う機会とされる。私たちも直面する困難や試練の中でもなお前進する群れとなりたい。教会における散らされる(ディアスポラ)の側面を意識しよう。


本論2 サマリヤへ (8:4-25)

迫害によって散らされエルサレムを離れた人々の中、教会の役員として立てられたピリポはサマリアの地に下り聖霊に満たされて福音を宣べ伝えた。ピリポにとっては宣教地であるサマリアの人々は、驚くことに十字架を信じて救いの恵みに導かれ、町には大きな喜びが起こったと記されている。これは福音が世界に宣べ伝えられる過程において立ちはだかる「壁」を乗り越えた最初の例と言えよう。悲しくもユダヤ人とサマリア人とは同一民族でありながら対立の歴史にあったが、福音は断絶の壁をも打ち砕き、同じ神の民とされるのである。これこそ神の力の成せる業である。その中で聖書はシモンという人物にスポットを当てる。彼は魔術を使って人々の注目を集めていたが、ピリポから福音を聞いて信じたかのように見えたが、その信仰は金の力にまかせて聖霊を受けようとする的はずれなものであった。福音が前進しようとする時、また悔い改めが不明確なところにサタンが忍び込み人々の信仰を惑わそうとする。警戒しなければならない。霊的な壁をも打ち砕き乗り越えなければならない。


本論3 エチオピアへ (8:26-40)

さらにピリポはサマリアからエルサレムへの帰路にあったが、反対方向のガザへと聖霊によって導かれた。26節「そこは荒野である。」は象徴的な言葉である。私たちも神を知らず荒廃した魂のもとへと導かれていると言えよう。実はここで歴史的な出会いがあったのである。ピリポは、エルサレム巡礼の帰路にあるエチオピア王女カンダケの高官の前に立った。高官はイザヤ書53章の「苦難のしもべ」が誰であるかが分からず、その説き明かしを必要としており、そこでピリポは旧約聖書全体を用いてキリストの十字架の救いを説明し、苦難のしもべが主イエスご自身であること解き明かし悔い改めへと導いたのである。高官は直ちにバプテスマの恵みあずかり喜びいさんで帰路を急いだ。以来エチオピアは長くキリスト教国となり、その歴史は現代史における共産革命まで続くことになった。ここに異邦人伝道のスタートがあり、福音の大きな歴史的前進があった。


結 論

福音も教会も状況の困難によって後退しない。むしろ前進のチャンスである。我らの信じる神は全てのことを働かせて益として下さるお方である。私たちは状況の善し悪しに左右されずに信仰に固く立ち、いつも福音の証しに生きる者となりたい。聖霊の力を受けて。

 

御言葉に対する応答の祈り

①いつも証しが出来る備えが整えられるように。

②状況に左右されない信仰に立てるように。

 

次回説教

 聖書箇所 使徒9:1~19

 説教題 「光を見る目、砕かれた心」


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