説教ノート No.25 2023.8.27
聖書箇所 ローマ人への手紙10章1節~13節
■序 論
パウロはこれまで、神の主権によるイスラエル民族に対する「選民」としての選びを語りつつ、その不信仰に言及してきた。それはイスラエル民族が特別に優れているから律法が与えられたのではなく、全ての民族に祝福と救いの道を開くための選びであった。しかし、彼らは律法義認の幻想の中に迷い込み、結局救い主につまずいてしまったのである。パウロはここで同胞の救いを願い、その不信仰の指摘し、さらに信仰義認を鮮明にする。
■本論1 心の望み (10:1-4)
この10 章冒頭において、パウロは嘆願の叫びのようにして同胞イスラエル民族の救いを祈り求めている。それは彼らの信仰には根本的な欠陥があり、結果的に救いを失っていたからである。その問題点は、①神への熱心はあっても知識の裏付けがないことであり、パウロは「その熱心は知識に基づくものではありません。」と指摘している。では「知識に基づかない」とはどういうことだろうか。それは旧約聖書を貫き預言者たちを通して啓示されたメシア預言に関する知識が脆弱であったということであろう。確かにユダヤ人の信仰は律法順守には熱心であったが、神の御心の全体を捉えるための聖書知識がバランスを欠いていたために、キリストを拒否しまったのである。第二の問題は、②イスラエル民族が自分の義を立て神に従わなかったことである。神から離れた信仰は自己義認へと変質し、プライドを満足させる道具になり、神の義を拒否するまで落ちて行くのである。ここにパウロによって指摘されたイスラエルの現実は、彼らを滅びに向かわせることになり、彼は同胞を愛すればこそ
神の民イスラエルの救いを嘆願したのである。私たちにも愛する者の救いを心の望みとして祈る責任がある。
■本論2 律法による義と信仰による義 (10:5-8)
次に、パウロは律法を守ることで義を得ようとしたイスラエルの誤りを、旧約聖書を引用して指摘し、律法義認の限界と信仰義認の教理を説明している。5節にある「律法の掟を行う人は、その掟によって生きる、と書いています。」はレビ記からの引用で、律法を完全に行うことが出来れば生きることが出来ても、それを完全に行える者は誰もいないことを指摘するものである。続く6~7節は申命記からの引用で、その意図するところはキリストの十字架と復活によって罪人が義とされる根拠がすでに与えられているということである。確かに天に上ることも、地の底に下ることも人間には実行不可能である。しかし、キリストがすでに罪人の救いのためにこれを成し遂げられており、神の前に義と認められ、救いを得るためには、何人もただキリストの十字架と復活を信じれば良いのである。この箇所は言い回しが少し難解であるように思えるが、その意図することは単純明快である。神は救いの条件に実行不可能な無理難題を要求されない。むしろ律法を自力で全うできない事実を認め、それを全うされたキリストを単純に信じる信仰を求めておられるのである。恵みの信仰がここにある。
■本論3 信仰は失望に終わらない (10:9-13)
最後に、パウロは「信仰による義」、即ち「罪からの救い」を得るために何をすればよいか、救いの条件について明らかにしている。9 節に「なぜなら、もしあなたの口でイエスを主と告白し、あなたの心で神はイエスを死者の中からよみがえらせたと信じるなら」とあるように、それは主イエス・キリストを心に信じ、口で告白することである。実はこの単純なことに重要な意味が含まれている。第一にキリストの十字架と復活を自らの救いの根拠として信じる信仰告白。第二に義なる神の前に自分が罪人であることを認め悔い改める告白。信仰に必要不可欠な二つのポイントである。神の救いを得るためにこれ以外の条件は要求されない。しかし、この信仰の告白は人格の全存在がかかった行為である。つまり、口で言い表すことは口先だけの言葉ではなく、それを告白する人がその全存在をかけた責任ある行為と言えよう。そして、私たちが信仰告白をした瞬間から聖霊なる神が私たちを支配し、守り導いて下さるのである。11 節に「この方に信頼する者は、だれも失望させられることがない。」と約束されているとおりである。しかもこの信仰の希望は、ユダヤ人もギリシャ人も区別なく全ての民族に開かれ、私たちにまで及んでいることを、驚きをもって感謝したいものである。神の救いの壮大さを見晴るかそう。
■結 論
救いはイエスを主と告白する「信仰」に基づくものである。しかも、聖霊の力が私たちの心に迫り、意思に働きかけ、決心へと導いて下さる。私たちに信仰告白を可能にして下さった神に心から感謝しよう。私たちは「聖霊によるのでなければ、だれも『イエスは主です』と言うことはできません。」(Ⅰコリント12:3)を根拠に、失望に終わることのない信仰の確信を胸に、主イエスとその福音を告白し続けるものでありたい。ハレルヤ。
■御言葉に対する応答の祈り
①霊の知識に基づいた信仰を養おう。
②キリストを信じ告白する信仰に堅く立とう。
■次回説教
聖書箇所 ローマ10:14~21
説教題 「御名を呼び求めよ」
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