説教ノート No.16 2023.5.21
聖書箇所 ローマ人への手紙7章1節~6節
■序 論
6章の主題は「聖化」であったが、7章では聖化における「律法との関係」が語られる。ここでパウロは、人が律法の下に生きているなら罪に定められる以外に道がなく、結局は死に至るのみであると説き、であれば律法から解放される以外に真の自由を得て生きることは出来ず、罪から解き放たれて生きる救いの道はないと説くのである。私たちは、自身の信仰生活においても「律法からの解放」という重要テーマをしっかりと確認しよう。
■本論1 結婚関係によるたとえ (7:1-3)
まずパウロは律法からの解放について、それを結婚のたとえによって説明している。結婚の誓約を交わした男女は、その契約において二人は律法によって一つに結ばれており、互いに婚姻関係の制約の中で生活しなければならない。もし夫の生存中にその妻が他の男のもとに行けば姦淫の罪を犯すことになる。しかし、夫が死んでしまえば彼女は夫との関係を規定する律法にもはや束縛されることはない。ここには律法とその当事者となる人間のとの関係性が分かりやすく説明されていると言えよう。つまり、①律法は人が生きている間その人に適用されるのであって死ねば適用されない。②婚姻に関する律法について言えば、妻は夫が生きている間は彼に結ばれているが、夫が死ねば別の男と結婚しても不法にならない。この婚姻法を例に、死がどのような律法との関係をも解消させてしまうことを教えるのである。それでは、私たちが私たちを罪に定める(規定する)律法からどうしたら解放されることが可能となるのかを確認し、私たちの律法に対する死とは何かを確認する必要がある。私たちにとって自分を支配しているものが何であるかを問いかけ、自分がすでにキリストの花嫁として結び合わされており、罪の奴隷、死の支配の中にないことをしっかり握ろう。
■本論2 律法に対する死 (7:4-5)
次にパウロは、律法に対する死がどのようにしてなされるのかを教える。結論を先に言えば、それはイエス・キリストの十字架によるのである。4節に「あなたがたも、キリストのからだを通して、律法に対しては死んでいるのです。」と説明されているが、これはキリストが私たちに代わって律法ののろいを受けて死なれたので、律法との関係がなくなっているという意味である。さらに律法に死ぬことの目的が記される。それは第一に「よみがえられた方と結ばれて」とあるようにキリストに属する者になることである。復活のキリストに結合されることこそ救いの完成と言えよう。第二は「神のために実を結ぶため」である。これは6章22節に「聖潔に至る実」とあるように、私たちが聖化の過程で言葉と行為において御霊の実(ガラテヤ5:22~23)を結実させていくことであろう。第二の人生開始である。私たちも自分の弱さや罪に翻弄される現実を見て自責の念に縛られ悩み苦しんではならない。むしろ、キリストの十字架の死によって罪の報いから解き放たれ、律法に対しても死んだものとされ、律法の責めから解放されていることをここに再確認して深く感謝したい。
■本論3 聖霊による生活 (7:6)
最後にパウロは、律法から解放された者の新しい生活について描写する。それは「新しい御霊によって仕えている」という表現で説明されているが、つまり聖霊による新しい生活のスタートである。かつて私たちは自分の内にある原罪が様々な影響を及ぼし、罪の道具のようになって生きて来たと言えよう。しかし今は、私たちを教え導き、とりなし守って下さる聖霊によって生活するようにされたのである。もちろん「御霊による」とは神秘的な宗教体験を意味しない。聖霊は聖書の御言葉と共に私たちに働きかけて導いて下さるのである。そうであれば私たちがどれだけ聖書の御言葉に聞いているかで、御霊による生活の豊かさが左右されていくとも言えよう。自分の肉の判断ではなく聖書を基準として生きる生活に神は豊かな結実を与えて下さる。ガラテヤ書6章22-23節に記されている「しかし、御霊の実は、愛、喜び、平安、寛容、親切、善意、誠実、柔和、自制です。このようなものに反対する律法はありません。」とある御霊の実を私たちも豊に結ぶものとして成長していくものでありたい。これがまさに聖化の途上を歩む私たちの願いと祈りである。
■結 論
今や、私たちが律法の責めから解放されて、キリストにある自由を与えられていることを心から感謝しよう。そして、私たちの信仰生活、キリスト者としての日常生活において、日々聖書の御言葉に教えられ、聖霊によって生活し、成長できるよう祈り求めて生きていきたいものである。御霊の実を結実させて下さる神に信頼し、期待し続けよう。私たちは主イエス・キリスト花嫁であり、この方によって生きる者である。
■御言葉に対する応答の祈り
①律法の責めから解放されていることを感謝しよう。
②聖書ともに働く聖霊の御業に信頼し期待しよう。
■次回説教
聖書箇所 ローマ7:7~13
説教題 「律法の目的」
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