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「御名のために」

説教ノート No.37                     2022.2.27 

聖書箇所 使徒の働き21章1節~16節


序 論

ミレトスでのエペソ教会の長老たちとの涙の別れの後、パウロはエルサレムへ向けて海路を急いだ。エルサレム教会への援助献金を携える「愛」と、試練と困難が待ち受けてもローマを目指す世界宣教の「ビジョン」を抱いてひたすら前に進むのである。神の召しを確信し、自分に与えられた「使命」に向かって全力を尽くそうとする者の雄姿である。私たちも一人のキリスト者として自分自身の道を果敢に歩み進む者でありたい。


本論1 ツロにて (21:1-6)

パウロ一行はミレトスから一路南下してコスに直行し、ロドスに寄港した後、西に進路をとりリキヤ州パタラに渡った。そこでフェニキア行きの船に乗り換えて航行を続け、キプロス島を左にさらに進んでフェニキアのツロに上陸した。地中海を西に西へと航行を続けること約1000キロ。それは順風満帆な時ばかりではなく、波頭を超えて進む困難な時もあったに違いない。私たちの人生行路と重ねて感慨深いものがある。ツロからエルサレムへは陸路を南下して約150キロの距離である。このツロでは一週間滞在することになるが、パウロは早速この町の兄弟、姉妹たちとの交わりの時を得て互いに信仰を励まし合い喜びを噛みしめた。また長旅の疲れをいやす休息を得ることも出来たであろう。このツロの兄弟たちは耳にエルサレムから聞こえてくるパウロに対する不穏な情報を知って、彼がエルサレムに上ることを止めようとしきりに進言している。初めて会ったにも関わらず、これほど親身になって心配してくれるツロの聖徒たちにパウロは大きな愛情を感じたことであろう。しかし、彼は志しを途中で放棄するわけにはいかない。教会の祈りに送り出されて前に進んだのである。


本論2 カイサリヤにて (21:7-14)

 パウロは海岸沿いに南下し、プトレマイスを経てカイサリアで伝道者ピリポとその家族に再会した。喜びの再会時であった。ところがここでユダヤから来た預言者アガボが、パウロの帯で自分の体を縛りあげ「この帯の持ち主を、ユダヤ人たちエルサレムでこのように縛り、異邦人の手に渡すことになる。」と聖霊の示しを語ったのである。これを聞いて、今度はルカはじめ同行者たちまで、危険が待ち受けるエルサレム行きを止めるよう懇願している。しかし、パウロは「主イエスの名のためなら、・・・死ぬことも覚悟しています。」と、毅然として言い切っているのである。彼の目には、十字架の待つエルサレムに向かう主イエスの御姿、ゲッセマネで御心のままにと祈る雄姿がはっきりと見えていたに違いない。さらに彼の心には神の計画は如何なる状況を経ても必ず実現するという固い確信があったことを忘れてはならない。パウロには危険の向こうにあるゴールである。そして、彼はやがて必ず地中海世界の中心都市のローマに立ち、全世界に向かって福音を伝えることこそが自分に託された神の御業とし、そこに至るまでは何者も阻むことが出来ないと信じていたのである。私たちも種々の困難に直面して途中で信仰を投げ出すことなく最後まで全うする者でありたい。


本論3 エルサレムへ (21:15-16)

カイサリアからエルサレムまでは南東方向を死海に向かって約100キロの道のり。パウロ一行は五旬節(ペンテコステの祭り)までには都に到着したいと先を急いだ。いよいよ長い旅を終えてエルサレム教会の懐かしい兄弟姉妹たちと再会し、その窮乏を今すぐに助けられるという喜びが彼らの心に大きくあったに違いない。同時に、いつどこから捕縛の手が迫るか分からない緊張感も強くあったことだろう。カイサリアの兄弟たちはパウロに同行してエルサレム近くに住むキプロス出身のムナソンの家まで案内した。彼はパウロにとっては第一回伝道旅行キプロスにおける実で、親しい同信の友であり、遠く離れていてもパウロを祈り支えてきた人物と思われる。この様にパウロの行く所どこにでも神の助けの御手があり、必要な協力者が備えられている。かつて教会への迫害者であったパウロが、今まさに福音の使者、愛の大使としてエルサレムに立つ。


結 論

 これまで地中海世界を三回に渡って伝道旅行を続けた使徒パウロを支えたのは「主イエスの名のため」という使命感と、「主のみこころのままに」という全てをゆだねる信仰であったと言えよう。この「使命」と「信仰」がキリスト者を動かす原動力である。私たちも主キリストのために何ができるだろうか。自分自身に問いかけながら、その原動力が聖霊によって私たちにも与えられていることを確認しよう。

 

御言葉に対する応答の祈り

①常にある神の助けに感謝しよう。

②使命と信仰によって歩めるように。

 

次回説教

聖書箇所 使徒の働き21:17~40

説教題 「自由は鎖に繋がれず」


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