説教ノート No.14 2023.3.26
聖書箇所 ローマ人への手紙6章1節~11節
■序 論
ローマ人への手紙は、この6章から主題を「聖化」の教理へと進めていく。「聖化」とは、信仰によって義とされ、その罪を赦された者が日々キリストに似せられ、キリスト者として整えられていく成長過程を意味すると言えよう。そして、パウロはここで序論として「洗礼」「バプテスマ」について説明し、信じた者が救いの後に経験する具体的変化について教えるのである。それは、私たちの経験でもある。
■本論1 キリストの死にあずかる (6:1-4)
先ず、パウロは現在の救いと過去の自分との関係から語り始める。それは「罪に対して死んだ」という言葉に象徴され、信じた者が与るバプテスマ(以下洗礼)によって説明されている。つまり、キリストの名による洗礼には「キリストの死にあずかる」という意味があり、ちょうど主イエスが十字架に死んで葬られたように、信じて洗礼を受ける者はキリストとともに古き肉の自我に死に、罪に対しても無力・無関係になっていくことを表わしているのである。言わば「洗礼」は過去の自分を葬り去る葬式の時であるとも言えよう。であるなら、このことによって私たちはもはや過去の自分を引きずり、罪の責めを負って生きる必要はなくなるのである。また、このような重要な意味を持つ洗礼は、真に悔い改めて信仰を告白した者にのみ与えられる神の恵みの手段であることを確認したい。私たちは自分自身が洗礼を受けた時をいつも思い起こし、信仰の原点に常に立ち返る者でありたい。また信じる者に対して与えられる洗礼への招きに、自分の意思ではっきりと応答するものであって頂きたい。
■本論2 キリストとの合一 (6:5)
次に、私たちが信じたその時点において経験するキリストとの関係について教えられる。それは5節にある「キリストと一つになっているなら」という短い言葉に集約される。この「一つになっている」という言葉は、「つぎ合わす(スムフトス)」「結合する」という非常に重要なの意味があり、接ぎ木によって台木と枝とが生命のつながりをもつようになることを表している。つまり、罪を悔い改め信仰を告白する者は、その瞬間からキリストに結び合わされて一体性を経験し、キリストのいのちによって生きる者となるのである。何と素晴らしい特権と幸いではないだろうか。この世の富や権力によっても決して手に入れることの出来ない大いなる価値を心から喜び、感謝したいものである。また、この接ぎ木の比喩は、主イエスが私たちをご自身とその救いに結び付けるために、十字架でその肉を裂いて下さったことを思い起こさせると言うことが出来る。私たちにとっては恵みとしての救いも、主イエスの側ではどんな大きな痛みと犠牲を払われたかを知らなければならない。その事実を決して忘れてはならない。そして、私たちが主イエスの体に刻まれた十字架の傷跡を仰ぐたびに、私たちは自分のいのちの源をそこに確認するものであり、その証言者であり続けるのである。
■本論3 キリストの復活にあずかる (6:5-11)
最後にパウロは、現在から将来に渡って継続していくキリストと私たちとの関係を、洗礼の意味をもって説明している。それは第一にキリストにある新しい人生の歩みのスタートである。4節「新しいいのちに歩む」、6節「罪の奴隷でなくなる」、11節「神に対して生きている者」と説明されているように、過去の自分の生き方とは全く違う方向に180度転換し、キリストの下僕として生きる者となっていくのである。第二は5節「キリストの復活とも同じようになる」という希望である。私たちは、罪赦された者ではあっても、未だこの肉体の制約の中で生きて行かなければならない。しかし、やがてキリストの再臨の時には、私たちはキリストと同じ栄光のからだに変えられ、信仰の完成の時を迎えるのである。この終末論的希望は、人間の想像の所産ではなく、神の約束によるものであり、神がそれを反故にすることは決してない。振り返って私たちは今、この現実世界の真っ只中で自分の弱さや制約と格闘しながら生活し、また生きている。これがまさに聖化の途上にある者の姿であると言えよう。しかし、私たちが困難の中を通る時も、そこには復活と栄化の確かな希望がある。
■結 論
聖化の歩みは栄化に向けての成長の過程である。天路歴程、私たちは全ての罪から解放され、キリストのいのちに生かされ、復活・完成の希望に向かって歩み、また導かれていることを感謝しよう。そして、信仰の成長は日々十字架を仰ぎ、御言葉に聴き従うなかで結実していくのである。今、ここから、新しい歩みの一歩を踏み出そうではないか。ハレルヤ。
■御言葉に対する応答の祈り
①聖化の途上、信仰の成長を祈り求めよう。
②十字架を仰ぎ与えられているいのちを感謝しよう。
■次回説教
聖書箇所 ローマ6:12~23
説教題 「わたしの献身」
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