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「真実な献げもの」

説教ノート No.10                     2020.8.30 

聖書箇所 使徒の働き5章1節~11節


序 論

初代教会におけるその麗しい姿は、互いの必要を満たし合う愛の交わりにあった。それは「共有」(コイノニア)という教会の本質を表すものである。キリストのからだとして結び合わされた教会は、そこに神の賜物として与えられているものを互いに分かち合い、共々に豊かになっていく。それは所有の源泉が神にあることを知るからである、ゆえに教会は御霊の一致を保ち建て上げられていく。


本論1 アナニヤの献げもの (5:1-2,7-8)

前章に登場したバルナバ(慰めの子)。彼の献げものは教会に大きな励ましと力になったが、その献げもの以上に、彼の信仰そのものが人々を励まし彼らの模範となったに違いない。ところが、ここにあまりにも対照的な出来事が起こる。アナニアとその妻サッピラの事件である。弟子たちが惜しみなく、しかも喜んで献げる姿を見たアナニアの目には、それが徳の高い行為として神々しく写ったのであろう。「自分も」と言わんばかりに、彼も持ち物を売って「献げもの」として代金を携えてきた。もちろん妻サッピラも同意の上である。しかし、バルナバの献げ方とは表面上は同じに見えても大きな違いがあった。それは「一部を残しておき」という言葉の裏に隠されている。神は献げものの大小、多寡より、そこに込められる心の真実を見極められるお方である。私たちも「献げる心」そのものに神への誠実、真の感謝を自身に問うものでありたい。キリストの十字架の価値を噛みしめつつ。


本論2 あざむきの罪 (5:3-6,9-11)

 さて次に、アナニアの献げる態度から彼の内面にメスが入れられる。ペテロは非常に鋭い言葉で彼の表に出ない心のうちに隠された罪を指摘した。それは第一に聖霊なる神をあざむく罪である。「一部を残し」たことが、サタンに心奪われ聖霊をあざむく行為と説明されている。この「残す」には「着服する」の意味があり、「ごまかす」「盗む」とも訳出されている。アナニアは本来自発的な行為である献げものを、裏に自分の誉れを買い求める代価のようにして神をあざむいたのである。第二のことは愛を共有する教会をあざむいた罪である。彼も麗しい愛の共同体の一員となりたかったに違いない。しかし、彼には自分のステータスそのものが目的であり、互いの不足を補うことも、宣教の必要を満たすことも眼中にはなかったのであろう。そして、結局のところ純粋な献身行為である献げものに虚飾の愛を加えて教会を欺いたのである。しかし、神は人の心の中を見つめておられる。


本論3 真実な献げとは 

 驚くことにアナニアとその妻は欺きの罪から「死」という悲しい結果を迎えている。これは人間の側からの同情を退ける神の裁きであると言えよう。同時に私たちの真実な献げものと、献げ方が問われていることも真摯に受け止めたいものである。旧約時代、神の民は傷のない小羊や初穂を献げて献身と感謝を表明した。初代教会、聖徒たちは十一献金をもって教会を支え、内には互いの必要を満たし、外には宣教の必要を満たした。それは強制されてではなく、あくまで喜びと感謝をもって自発的にである。考えてみれば、主イエスご自身が自分のいのちを犠牲にして献げ、私たちに救いをもたらされたのである。この十字架を見上げるとき、私たちが差し出せるものはなんと小さいものか、しかし、自分自身を神に献げる時に、神が「献げる者」と「捧げた物」を祝し、それを用いて神の栄光を表して下さるのである。私たちの神への真実な献げものには、私たちの真心が込められる。

結 論

 私たちは全てが神から与えられていることを感謝し、献げることの出来る恵みを喜び、最高・最善のものを真心から献げる者になりたい。私たちが献げる五餅二魚が用いられ,自身と、家庭と、教会と、さらには隣人が豊かに満たされたように共に祈ろう。私たちの献げものが福音の満たしに用いられることを願いつつ。私たちは豊かな者である。ハレルヤ。

 

御言葉に対する応答の祈り

①真心から喜んで献げる者となれるように。

②私たちの献げものが御業に用いられるように。

 

次回説教

 聖書箇所 使徒5:12~42

 説教題 「福音の前進」


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