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「神に発し、神に至る」

説教ノート No.29                    2023.10.22

聖書箇所 ローマ人への手紙11章25節~36節


序 論

 9章から11章において、パウロは、全ての人、全ての民族に対する神の救いの計画がどのように進展して行くかについて論じて来た。そして、この箇所ではその救いがどのようにして完成に至るかについて結論が語られている。救いは信仰によって神に従おうとする全ての人、自らの罪を悔い改めてキリストの十字架を告白する者に与えられ、完成して行くのである。私たちも自分の神に対する立ち位置を確かめ、信仰告白を新たにしよう。


本論1 神の奥義 (11:25-27)

 段落冒頭、パウロは先ず、ローマ教会の兄弟姉妹たちが自らを知者と自負して高慢に陥らないよう「奥義を知らずにいてほしくありません」と語りかけている。彼の書簡において「奥義」という語にはいくつもの意味が重なっており、それは、①救いの真理、②キリストの受肉、③神の福音、④ユダヤ人と異邦人が共に与る御国の祝福、⑤内住のキリスト等を意味するものである。そして、この文脈では異邦人とイスラエル民族の救いに関する神の計画のことを意味しており、その内容は、選民イスラエルが心を頑なにしてキリストの福音を拒否したことによって異邦人に救いが及ぶことになったが、やがて必ずイスラエル民族も救いに与るようになるということである。それではなぜ異邦人教会であるローマ教会がこの奥義を知る必要があったのか。それは異邦人キリスト者が自分の力で救いを獲得したかのように思い上がることがなく、イスラエル民族を軽んじて救いのルーツを無視することがないためである。そのためにパウロはイザヤ書27:9、59:20、エレミヤ31:33を引用しながらローマ教会の兄弟姉妹たちに敬虔な信仰を願い求めたと言えよう。私たちも恵みを忘れ、敬虔を失ってはならない。


本論2  変わることのない神の計画 (11:28-32)

 次にパウロは、「神の賜物と召命は、取り消されることがないからです。」という言葉を選んで、神の救いの計画が選民イスラエルに対しても異邦人に対しても変更されることがないことをしっかりと説明している。彼の言わんとすることは、イスラエル民族が、今は福音に敵対し神に不従順ではあっても、神が彼らの父祖(アブラハム)たちに与えた祝福の約束すなわちアブラハム契約のゆえに、恵みとあわれみの対象であることには変わりはない。また異邦人も福音を知らない時には神に敵対していたが、今は神の恵みの中に入れられている。この両者は対象的な立場にあるがいずれも神のあわれみによって救いに招かれているというのである。この「神の賜物と召命は、取り消されることがないからです。」という鍵句が示すように、私たちが如何なる者であっても信仰に立ち続けるとき、私たちに対する神の救いは途中で変更されたり、反故にされたりすることなく、聖化の途上の向こうにある救いの完成・成就は、神の側で保証して下さっているのである。そして、私たちの信仰生活を支え、励まし、導いていて下さることを決して忘れてはならない。故に、私たちは状況の良し悪しや、感情の波に翻弄されることなく、いやその嵐の中でこそ変わることのない神の計画に期待して歩み続ける者でありたい。


本論3 神に発し、神に至る -神への讃美- (11:33-36)

 最後にパウロは、はかり知ることのできない神の御業の偉大さに思いをはせ、神を賛美し、神に栄光を帰している。「神の知恵と知識の富は、なんと深いことでしょう。神のさばきはなんと知り尽くしがたく、神の道はなんと極めがたいことでしょう」と。これは神の業が不可解ということではなく、救いの展開、進展とその内容があまりにも偉大で、人間の理解をはるかに越えているという意味である。私たちは自分の知識や知恵を誇ることで最も大切なものを見失う落とし穴があることを忘れてはならない。これは哲人が説いた「無知の知」以上のことで、信仰によって初開かれる視点であると言えよう。そして、パウロは「すべてのものが、神から発し、神によって成り、神に至る」とこれまでの論述の結びを語っている。万物は創造主である神によって造られ、その摂理の中を導かれ、神の目的に向かって進んでいるのである。このパウロの言葉は聖書の教える世界観、人生観そのものであり、私たちに生きる希望と力と目的を与えるものである。私たちは、罪の闇の中にあった者が救われて神の栄光のために生きる者と変えられたことを感謝しよう。


結 論

 全てのことが神の御手の中にある。全てのことが神に発し、神に至る。そして今、私自身が信仰によって罪を赦され、聖化の途上を歩む者とされている。私たちがキリストにしっかり結び合わされている限り、どんな試練や困難、迷いや誘惑の嵐の中にあっても決して倒れることはない。失望に終わることはない。聖化の途上を御言葉の約束に信頼しつつ、「私」の一歩を踏み出そう。ハレルヤ。

 

御言葉に対する応答の祈り

①変わることのない神の救いの計画に感謝しよう。  

②神の御手を信頼して信仰の歩みを進めよう。

 

次回説教

 聖書箇所 ローマ12:1~2

 説教題 「わたしの献身」


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