説教ノート No.20 2023.6.25
聖書箇所 ローマ人への手紙8章12節~17節
■序 論
この短い段落には、聖化における重要な祝福の一つが語られている。それは御霊の内住とキリストにあって「神の子とされる特権」が与えられるという約束である。前に4章で、信仰義認によってアブラハムの子孫として「世界の相続人」とされる特権と祝福が与えられることを学んだが、パウロはここでさらにその詳細を具体的に教えている。そして、その鍵句は17節の「共同相続人」という言葉である。その意味するところを確かめよう。
■本論1 御霊によって生きる (8:12-13)
先ず、パウロは本題に入る前に、聖霊に従って生活する聖化の原則をもう一度確認し、それを「私たちには義務があります。」「肉に従っていきなければならないという、肉に対する義務ではありません。」という言葉で表現している。これは私たちがキリストとともに肉(救い以前の古き人)に死んだため、今や肉(罪の性質)に対して無力となり、肉の欲求に支配されたままこれを満足させる義務はないという意味である。この「義務」という強い言葉を用いたことには、束縛から解放された自由への確かな自覚が込められていると言えよう。そして、その上で「御霊によってからだの行いを殺すなら、あなたがたは生きます」と言葉を続けている。これは単なる禁欲主義の奨励ではなく、罪の奴隷として悪しき行いと習慣に縛られていた者が、それを殺し続けるという積極的な生き方を求めているのである。この「殺す」にも誤解があってはならない。このような生き方は人間の努力や修養によっては行えず、「御霊によって」と先行説明があるように、ただ全能なる神、聖霊の力によってはじめて可能となることは言うまでもない。聖霊の圧倒的力が人間の罪の行いを駆逐するのである。
■本論2 御霊によって子とされる (8:14-16)
次に主題の中心点に入り、パウロは聖霊によって聖化の道を歩む者に与えられる特権について語っている。それは「神の子とされる特権」である。「神の子とされる」とは神の家族に養子縁組されるという意味で、その者には大きな特権が付与されることになる。それは、①ローマ法において養子縁組されて迎えられた者には相続人となる立場が付与され、仮に実子が生まれてもその権利が保証されている。同様に、神の子とされた者には御国とその富を相続する権利が与えられ、それを父なる神が保証して下さるのである。何という驚くべき特権と祝福ではないだろうか。②さらに養子縁組が完了した時には、子となったものは古い以前の生活に関する全て事が清算され、過去の権利も負債も全て無効になるように、過去の罪の負債と責めに対して全く関係無い者にされるのである。今や私たちも「神の子とされる特権」が与えられた者である。それゆえに、私たちは再び罪の恐怖に陥れられることなく、神との親しい交わりに生きることが許されていることを見失ってはならない。そして、それを聖霊が保証して下さっているのである。もはや罪の子、滅びの子ではなく、神の子とされていることを感謝し、大胆に、喜んで生きて行こうではないか。これが聖化の途上を生きる醍醐味である。
■本論3 御霊によって相続人とされる (8:17-18)
最後に、パウロは神の子の特権の中でも特に「相続人」の意味内容についてさらに詳しい説明を続けている。それは真の相続人である御子イエス・キリストを外しては考えられないということである。三位一体のキリストはその十字架と復活により、全ての栄光を受け、神の御国を支配するお方でもある。そして、驚くことに神の子とされた私たちも「キリストとともに共同相続人」とされ、神の御国を受け継ぐ特権と祝福を受けているのである。私たちは、神のひとり子キリストが御国の相続人として栄光の御座につくために十字架の苦難の道を通られたことを忘れてはならない。注目すべきは「私たちはキリストと、栄光をともに受けるために苦難をともにしているのですから」と明記されていること。この「苦難をともにしている」の意味を思い巡らすと、私たちの心に「日々自分の十字架を負って、わたしに従って来 なさい。」(ルカ9:23)という主イエスの言葉が迫って来る。
私たちは、信仰故の試練や困難の渦中に置かれる時こそ、キリストの御苦しみを自らに深く覚えつつ、既に与えられ、約束されている共同相続人としての宝に大いに感謝しよう。
■結 論
私たちが信仰を告白し、主イエスの十字架を仰いでみことばと聖霊に信頼して聖化の途上を進むとき、私たちは罪の奴隷から神の子の立場に移され、キリストとの共同相続人として生きることになる。その新しい人生の歩みは、残存する肉の要求にも抗い、試練や困難をも乗り越え、神の祝福の豊かさ経験しながらの日々となる。その旗印はキリストの十字架。聖霊の力によって勝利と報いは約束されている。ハレルヤ。
■御言葉に対する応答の祈り
①キリストとの共同相続人とされていることを感謝しよう。
②十字架の向こうにある相続の富を感謝しよう。
■次回説教
聖書箇所 ローマ8:18~25
説教題 「この望みによって」
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