top of page

「義人はいない」

説教ノート No.7                       2023.1.8 

聖書箇所 ローマ人への手紙3章9節~20節


序 論

 パウロは、前段落でユダヤ民族の「御言葉が委ねられた責任と特権」を語った。それは神の選民とされたことも、民族的優位性ではなく、あくまでも一方的な選びと恵みによるもので、やはりユダヤ民族も、それ以外の民族も、全ての人間が神の前に罪人であることには変わりはない。続いて、ここでは人間の本質的な罪、原罪について論じ、信仰によって与えられる救いの恵みを鮮明にしていく。


本論1 すべての人が罪人 (3:9-12)

 先ずパウロは「義人はいない、一人もいない」と詩篇14篇を引用し「すべての人が罪人」という結論を語り、その詳細を丁寧に説明している。神の前に全ての人間は如何なる者か。①神理解の欠如、「悟る者はいない」(11節)この「悟り」(スニオー)は「理解する」という意味で、心を開いて神を理解しようとする人がいないということである。②求道心の欠如、「神を求める者はいない」(11節)これは人間の意志に関し、求めれば得られるのに拒否する怠慢さである。③的はずれ、「すべての者が離れて行き」(12節)とは「曲がっている」という意味が含まれる。心が曲がって人として当然進むべき道からはずれている状態で、「的はずれ」すなわち罪の本質を言い表すものである。その結果、役に立たない「無用の者」(12節)になり、塩気を失った塩のように無意味な者となり、捨てられてしまうというのである。私たちは、人が神から離れるとその価値失ってしまうことを知らなければならない。


本論2  言葉と行為における罪 (3:13-18)

 次にパウロは、神から離れた人間の具体的な行為としての罪をやはり詩篇を引用して指摘する。第一は言葉による罪である。①醜悪な言葉、「喉は開いた墓」(13節、詩篇5章9節)内にある腐敗臭が外に漂うように口から汚い言葉が吐き出され、②欺きの言葉、「舌で欺く」(13節、詩篇5章9節)巧妙な言葉で人を欺く指向性を持ち、③殺す言葉、「まむしの毒、呪いと苦みの言葉」(13、14節 詩篇140篇3節、詩篇10篇7節)小量の毒に大きな殺傷能力があるように、言葉にも人を簡単に殺す力がある。第二は行為による罪である。人間の罪は言葉だけにとどまらず、必ず行動に表れてくる。ここでは「足」「道」が人間の行為を表し、それは「血を流す」(15節、箴言1章16節)「破壊と悲惨」(16節)に満ちていると指摘する。ここに弁解の余地はなく、人間の歴史が如実に物語るのである。


本論3 律法義認の否定 (3:19-20)

 最後にパウロは、人間の罪に関する結論を語る。それは罪人である人間がやがて必ず神の前に裁かれるという厳しい警告の言葉である。そして、その理由が、律法によっては誰も神に義と認められないから、と説明が加えられている。もちろん原則的には律法を完全に行うことができるなら、その人は義なる者であるが、実際はそれを行える者は誰もいないので皆有罪となるのということである。さらにパウロは、律法がその人に適用されると「罪の自覚が生じるのみである」とも結論づけている。ガラテヤ3章24節には、新約における「律法」は「キリストに導く養育係」と位置づけられているが、私たちが神の基準で自分を測ると、自分自身がいかに罪人であり、イエス・キリストの救いを必要としていることが見えてくる。自己義認から信仰義認へ方向転換する恵の時が備えられている。


結 論

 パウロの引用した詩篇の指摘は、まさに私たち自身に対するものである。パウロを通して語られた神の言葉に私たちは謙遜に心を開いて、自分の力では到底解決すめことの出来ない本質的な罪である原罪と、思いと行為における罪を認め、キリストの十字架を前に悔い改める者でありたい。その時、神の側から「汝の罪赦されたり」との救いの宣言が発せられ、罪の奴隷から解放されるのである。ハレルヤ。

 

御言葉に対する応答の祈り

①神を拒否する自我が砕かれるように。  

②悔い改めることに素直であれるように。

 

次回説教

 聖書箇所 ローマ3:21~31

 説教題 「信仰による義」


最新記事

すべて表示

「信仰に堅く立つ」

説教ノート No.40                      2024.7.7 聖書箇所 ローマ人への手紙16章17節~27節 ■序 論 パウロはこの手紙を結ぶにあたって、教会と信徒たちの信仰がどの様な状況においても信仰義認、即ち恵みの信仰に堅く立ち続けることを心から願...

「愛する同労者へ」

説教ノート No.39                     2024.6.23 聖書箇所 ローマ人への手紙16章1節~16節 ■序 論 いよいよ最終章、コリントの町から筆を走らせるパウロの心には、遠くローマ教会の愛する兄弟姉妹たち一人一人のことが存在し、その名前を呼びか...

「ビジョンに向かって」

説教ノート No.38                      2024.6.2 聖書箇所 ローマ人への手紙15章14節~33節 ■序 論 パウロはこれまでキリスト者が何を信じ、何を告白するか、その内容である「教理」と説き、さらにキリスト者が如何に生き、どのように生活する...

Comments


Commenting has been turned off.
bottom of page